中絶以外の選択肢~予期せぬ妊娠をしたとき~

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先日、とある公立中学校の保護者向けに、助産師として性教育の講演をしてきました。

10代の妊娠の現状や、社会的養護についても話をすることができました。

話してきた内容の一部を、こちらに書き留めておこうと思います。もっとたくさんの方に知っていただきたいので…。

小さな活動ですが、少しずつ社会的養護についての理解が深まるきっかけになれば良いなと思っています。

予期せぬ妊娠や望まない妊娠をした時、妊娠が判明したタイミングが早ければ、比較的負担の少ない人工妊娠中絶術を受けることが可能です。

しかし、もともと月経不順などがあると、妊娠に気づくのが遅れがちです。妊娠が判明した時には既に人工妊娠中絶ができない時期になっていた場合や、お腹に宿った命を産みたい、という気持ちがあって中絶の決意ができない場合に、「産んで託す」という選択肢もあることを知っていただけたらと思います。

人工妊娠中絶の現状

2020年の1年間の人工妊娠中絶件数は約14万件でした。年次推移でみると年々減少傾向ですが、それでも毎日1日あたり約400件弱の人工妊娠中絶が全国で行われていることになります。

一般社団法人 日本家族計画協会 2020年度の人工妊娠中絶届出件数 前年度比1割減 | 家族と健康 | 一般社団法人日本家族計画協会-JFPA-より 

また、妊娠数に対する中絶数を割合でみると、10代の人工妊娠中絶率と45歳以降の中絶率が突出して高いことが分かります。

一般社団法人 日本家族計画協会 2020年度の人工妊娠中絶届出件数 前年度比1割減 | 家族と健康 | 一般社団法人日本家族計画協会-JFPA-より

助産師をしていると、中絶に至る女性には多種多様の複雑な背景があっての選択であることがよくわかります。

中絶したくてする人なんていません。

女性一人では絶対に妊娠しないのに、女性ばかりが苦しんでいるように思えて悲しくなることもあります。

中絶も一つの選択肢であり、女性の健康を守るために女性がもっている権利でもあります。助産師としての役割は、お一人お一人の気持ちに寄り添い、自己決定を支え、尊重することです。

人工妊娠中絶以外の選択

「産まない」選択以外に、どのような選択肢があるのでしょうか。

妊娠に気づいた時、既に中絶のできる時期を過ぎてしまっていた場合、どのような選択ができるのでしょうか。

大きく2つあります。

1つは、「産んで育てる」

もう1つは、「産んで託す」  です。

産んで育てる

産んで育てるには、パートナーをはじめとする家族の協力と、周囲の祝福と応援が必須です。

産んだ子が望まない妊娠の結果であった場合、虐待のリスクは上昇すると言われています。

だから、精神的にも物理的にも、(可能なら)経済的にも支えてくれる人の存在が必要です。

産み育てる覚悟をするのは本当に大変なことだと思います。

タイミングによっては、学業や、友人関係、進路、就職、自分の夢など…これからのご自身の選択を狭めてしまうことになりかねません。

10代の妊娠や高齢での妊娠は、心身の負担も大きくなります。

けれども、中には出産を選択し、育児を通して幸せに暮らしている方もいます。

高校を中退して出産し、家族の協力を得ながら通信制高校に入り直し、育児をしながら高校を卒業された方も知っています。

「たくさん苦労はあったと思うけど、ママが私を産んでくれてよかった。」と言ってくれたお子さんもいます。

悩んだら、ぜひ助産師に相談してみてください。

産んで託す

産んで託す方法には、「養育里親」に託す方法と、「特別養子縁組里親」に託す方法があります。

養育里親に託す

今は育てられないけれど、将来的には我が子を引き取って育てたい、という方には、養育里親や乳児院に預ける方法があります。

乳児院や里親制度は、様々な事情により子どもを育てられない間、一次的に産みの親に替わって養育してもらう制度です。

里親家庭に託して、家庭的な環境で養育してもらい、準備や環境が整ったら引き取ることができます。親権は、預けている間でも産みの親にあります。

特別養子縁組里親に託す

特別養子縁組では、赤ちゃんを産んでも育てられない場合に、他の夫婦の実の子どもとして育ててもらう制度です。

特別養子縁組が成立すれば、戸籍上もその夫婦の実の親子となり、産みの親の親権はなくなります。

養子縁組家庭の幸福度

特別養子縁組した親子は、その後幸せに暮らせるのでしょうか?

日本財団から「養子縁組をした親子の762人のこえ」というデータが出ています。

公益財団法人 日本財団 「養子縁組をした762人の親子のこえ」より

特別養子縁組の親も子も、90%以上が「子どもを育ててよかった」「養父母に育てられてよかった」と回答しています。

公益財団法人 日本財団 「養子縁組をした762人の親子のこえ」より

養子縁組家庭の子どもは、一般家庭の子どもに比べて幸福度が高いことが分かります。

そして何より、養子縁組家庭の子どもの10点満点率の高さに、私は驚きました。

20%以上の子どもたちが、自分の幸福度に対して満点をつけたのです。

誰かに託された子たちは、可哀そうでもなければ不幸でもありません。

深い愛情をもって大切に育ててくれる人に託すという選択は、産みの親からの愛の選択であり、素晴らしい命のバトンでもあると私は思っています。

もし今、予期せぬ妊娠をして悩んでいる方がいたら、ぜひ誰かに相談して頂きたいと思います。

正解なんてありません。その時悩んで出した決断が、その時のベストな選択なのです。

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